●ケニー・バレル 1931年アメリカ合衆国ミシガン州デトロイト生まれ 51年--そのギターから滑らかに繰り出されるクールな音色のバップ&ブルースで、デトロイト旅行中のディジー・ガレスピーの目にとまった。そして巨匠に認められた彼は、そのままニューヨークに移住して人気ミュージシャンとなっていった。バレルは、ギターから激しい炎のようなフレーズを吐き出している時でも、どういうわけか冷静に見える、不思議なミュージシャンだ。また、メロディを大事にし、スタン・ゲッツやギル・エヴァンス・オーケストラ、さらにはジョン・コルトレーンなどとも相性のいいサウンドの持ち主である彼は、ハモンドB-3オルガンの名手、ジミー・スミスと長い間パートナー関係を築いてきた。そして彼のブルージィかつ美麗なギター・サウンドは、スミスのオルガンから生みだされる泥臭いリフと組み合わされると一層輝きを増したのである。彼はフュージョン・ギターの誘惑に屈することはなく、それを自分のスタイルに取り入れることも決してなかったが、バレルの音楽は今でも色褪せずに輝いている。
●Midnight Blue
1: Chittlins Con Carne
2: Mule
3: Soul Lament
4: Midnight Blue
5: Wavy Gravy
6: Gee Baby Ain't I Good To You   7: Saturday Night Blues
ケニー・バレルの魅力は、そのブルージーなギター・プレイにある。といっても、それは真っ黒な感じではなくて、どこか都会的で洗練された感じのアーバン・ブルース。だからバレルが最高に輝いているのはブルースを弾いている時だ。アルバムでいうと、本作がまさにそれ。オープニングの<1>が始まった瞬間、思わず鳥肌が立つ。4曲目のタイトル曲にさしかかると恍惚の境地。そしておなじみの<6>になると、もうどうにでもしてくれと叫びたくなる。

とにかく本作はブルースのオン・パレード。しかもスローありミディアムあり、あの手この手で楽しませてくれる。単にブルースをやっているというだけでなく、それぞれの曲に表情があり、泣かせるメロディばかりなので満腹感を味わえる。ブルージーなギターと相性がいいのはオルガンとサックスというのが相場だが、本作ではスタンリー・タレンタインのテナー・サックスが、これまた持ち味を発揮したソウルフルな演奏で、ジーンと胸に染みる。(市川正二)